窓の格子

窓の格子/私が体験した実話の怪談・奇談
高校を卒業して大学浪人ということで福岡県の予備校に入ることになりました。

複数の予備校がありますが、大手の中でも厳しすぎず、緩すぎずの予備校でしたが約200人が入れる男子寮があり、私は1年間そこにお世話になることになりました。

予備校の寮に入る上で私がホッとしたのは完全個室で各部屋には一体型ですがトイレも風呂もあるということです。

エアコンも各部屋についていて、1つだけ不満があると言えばテレビは持ち込み禁止ということでした。

3月末、入寮の日は荷物もあるので大分から福岡まで両親に車で送ってもらいました。

入寮の手続きを済ませると最後に部屋を決めることでしたが、くじ引き方式で10階建ての7階の部屋を引き当てました。

鍵を受け取り、車から荷物も降ろして部屋に上がりました。

部屋には机とベッドと冷蔵庫があり、広くはないですが思ったよりもきれいな部屋に両親と驚きました。

あと引き違い窓が1つありましたが、7階ということもあり、町並みもうかがえ割と見晴らしはいい感じでしたが、窓には縦の格子がついていました。

母と「なんか囚人みたい」と笑いました。
囚人であることは間違いないのですが(苦笑)

窓を開けてみようとしたところ「ガンッ!」という音とともに、3分の1しか窓は開きませんでした。

不良?と思ったのですが、よく見るとサッシレールには開かないように細工がされていました。

その細工はどう見ても後付されたようでした。

これについても母と「逃げ出し防止?」「やっぱり囚人みたい」と笑いました。

持ってきた荷物をある程度片付けて、寮から出て近くの定食屋で食事をしたあと、両親は大分へ帰っていきました。

寮とは言え、初めて親元から離れての生活が始まりに少し緊張と不安を感じながら、夕食の時間まで部屋で過ごしました。

入寮日は3日間あり、初日に入寮したため夕食を食べる食堂もまばらで、7階の部屋もまだ数人しか入っていないようですごく静かな1日目だったのを覚えています。

2日目、朝食を食べ終えると近くのスーパーに足りない生活必需品を買いに行こうと寮から出ようとすると寮監から「名札をひっくり返すのを忘れないでね」と声をかけられました。

ちなみに私の名札は7階の17号室だったので717と上部に書かれて、その下に名字が書かれていた。

寮監室の前に名札掛けがあって出入りの際にひっくり返す決まりになっていましたがまだ3分の1程度しか名札がかかっていませんでした。

スーパーに行くのと周辺の探索などして、昼飯も食べてから寮に帰ると入寮手続きで一階はごった返していました。

2日目に入寮する人が多かったのでしょう、夕方に名札掛けをみると8割型が埋まっていて、晩飯の食堂も席を探さないといけないほどでした。

入寮日3日目の最終日、パラパラと入寮者をみかけ、私の両隣も人が入ったようでした。

夕方には入寮後のオリエンテーションがあり、翌日は予備校でもオリエンテーションと実力テストがあり、ようやく浪人生活がスタートするのを感じました。

とは言え、予備校で講義が始まるのは中学や高校と同じように4月からで、それまでは任意参加の春期講習がありました。

私は春期講習に参加するためそのまま寮に残りましたが、少し仲良くなった隣の部屋に入寮した寮生T君は晩飯を食べている時に「春期講習中は実家に帰る」と言っていました。

T君から「そう言えば窓が開けられないけど、あんなもんなん?」と聞かれたが「あんなもんなんだろうね」と話、お互い納得しました。

予備校の講義が4月から始まり、なんとなく予備校生活にも慣れてくると寮内でもグループ化されてきて、私も10人ぐらいのグループで食事を食べるようになりました。

ある日の晩飯の時に大分から入寮してきたA君が「今日、予備校で地元のヤツに聞いたんだけど、この寮で何年か前に受験ノイローゼの飛び降り自殺があったんだってよ。格子はその後に付けられたらしい。」と話しだした。

格子が付いてるのも、窓が3分の1しか開かないのも納得がいった。

しかし話にはまだ続きがあった。

「なんでも飛び降りた霊が出るらしい。しかも何度も飛び降りてるらしい。」

霊が何度も飛び降りる?一瞬意味がわからなかった。

Aは続けた。
「寮に帰ってきて名札見て、マジでビビったね。部屋は綺麗に埋まっているように見えるけど、どの階も11号室だけないんだ。」

名札には寮監の手書きで号室と名前が書かれているが、自分の名札以外、そんなにまじまじと見たことはなかった。

晩飯が済んでから数名で寮監室前の名札掛けを見に行ったが、本当にどの階にも11号室の名札はなかった。

10号室の名札の横には隙間なく12号室の名札がかかっていた。

絶句していると寮監が「どうかしたか?」と声をかけてきたが「大丈夫です。」と答えて食堂に戻って茶を飲むことにした。

「11号室だけ入ってないとか偶然にしてはよくできてるなぁ…」「俺、8号室なんだけど近くてなんかやだ」とそれぞれ言いたいことを言っていた。

飛び降りがあったのが11号室からで、何階から飛び降りたかということとは気になるがもし飛び降りの霊が何度も飛び降りをしていて下の階から見えるのならば、現状は11号室には誰も入ってないので直接的な害はないはずだ。

こうした結論をだして、また何かあったら情報共有することをグループ内で約束した。

予備校でも高校と同じように夏休みが始まり、夏の夏期集中講座が始まる。

夏期集中講座には浪人生だけでなく高校生も参加していた。

福岡県外から夏期集中講座に参加する高校生は寮に宿泊していた。

寮の2階は全室空き部屋になっていたが、夏期集中講座期間の遠方高校生受け入れのために開けていたらしい。

夏期集中講座が始まる前の日に夏期集中講座参加の高校生の入寮日となっていたが、私達は2階の11号室=211の名札がやはりないことを確認して再度、肝を冷やしてみた。


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