4月1日、エイプリルフール。
「結婚しました」
「離婚しました」
「子どもができました」
「病気になりました」
「宝くじが当たりました」
嘘が飛び交う1日、4月馬鹿。
人を驚かせようという魂胆が見え見えであまり好きではない1日。
大学時代にユーモアあふれる先輩がいた。
他の先輩と少し違う空気を醸し出している方で、冗談や嘘がうまい。
嘘も人を貶めるような嘘もつかない。
そして余り生活感がないと言うか、少し退廃的な香りがするところがまた魅力的なところだった。
あまり人と群れるのが好きでない方だったが、何故か私は可愛がってもらい、大学を卒業後も時たまに会って酒を飲む事もあった。
ある年の4月1日。
仕事終わりの会社から出て車に乗る前に携帯を見ると先輩からメールが来ていた。
「結婚しました」
あれまぁ、先輩にしてはなんてわかりやすいエイプリルフールなメールだろう。
「おめでとうございます」
とメールを返して、会社の駐車場から車を発進させた。
先輩はこんなことを大学時代に言っていた。
「4月1日は嘘が跋扈しているので俺は嘘をつかない。だから家に籠もる。」
と言うことは!?
運転し始めた車をすぐ路肩に止めて、先輩に電話した。