ライムグリーンのカワサキ

ライムグリーンのカワサキ/実話の怪談ブログ
高校1年の頃。

いつも昼飯をクラスメートの5~6人で集まって食べていたが、いつの間にか隣のクラスのYもグループの輪に入っていた。

印象的にいつも薄く笑っているような感じヤツだった。

僕はあまり話すことがなかったがグループのAと気が合うらしく、排他的に考える必要もないし、それはそれで良いかと思っていた。

しかしこのYはかなり変わっていることが後々になって分かる。

 

ある日、

「今日はさぁ、良いもの持ってきてるんだよね。」

昼飯の最中に突然話し出すと、学ランのボタンを外し、中に手を突っ込む。

そして抜き出した手にはエアガンが握られていた。

銀色に光る、ベレッタ92。

エアガンとは言え、なんて物騒なものを突然に。

たしかに小学校高学年から中学校にかけて流行っていて、

誰もが自宅には一丁や二丁は持っていた時代だが、

なぜわざわざ高校に持ってくる?

と思っていると、

「おおお!マジか!」

と、Aだけ興奮気味の反応。

そっか、ミリタリーオタクだったw

 

別の日にも色々な物を持ってきて、僕たちに披露していた。

完成したガンダムのプラモデル、有名なAV、某野球選手のサインボールなどなど。

そしてある日、僕らに見せたのはダガーナイフとバタフライナイフ。

当時はまだ銃刀法が厳しくなかった?今のように神経質ではなかったので手に入れようと思えば手に入る代物。

ただこれを学校に持ってくるのはだいぶヤバい。

そして刃を見る目がだいぶイッちゃってるような気がした。

そしてまた、ある日。

ホームルームが終わり、帰ろうとして廊下に出るとYが待っていた。

僕ら数人に来てほしいという。

しかも学校を出て少し坂を下ったところにある駐車場に。

なんかまた変な物を見せられるんじゃないかと、

数人と目配せをしながら行ってみた。

市が管理する駐車場で何台かの車やバイクがチラホラ停められている。

その駐車場の一番端にシートを被せられた、なにか。

Yが嬉しそうにシートを剥ぐと、、、




鮮やかなグリーンのバイクだった。

あとから知ったがカワサキの250ccのバイクで、

ライムグリーンはカワサキを象徴する色・・・らしいw

ステッカーなどの装飾もされていて、

目に入ったのがカウルに貼られた「16」の大きなナンバリングステッカーだった。

フルフェイスのヘルメットにも同じく「16」と雷のようなマークなどベタベタと貼られていた。

「16」にどういう意味があるかは知らない。

「ちょっと無理して手に入れたんだ!」

Yの高揚感が伝わる口調だった。

基本的にうちの高校はバイク通学禁止。

でも見せたくて仕方なかったんだろう。

事実、Yだけではなく他の学生も原付きで近くまで登校してきている生徒もチラホラいた。

当時、バイクや車にあまり興味がなかったので何が良いのかよくわからなかった。

マフラーもいじっているようだったが、ただううるさく思えた。




それから、

部活の帰りだったり、街に遊びに出ている時など、Yが例のバイクで走っている姿を見かけた。

向こうもこっちに気づくと、わざわざ親指を立ててこっちにサインして見せていた。

いや、あんまり関わりたくないんだけど・・・というのが正直な感想。

ある日の昼食。

数日、Yが来ていないことに気付いてAに聞いてみると、

「バイクがバレて、謹慎中。」

だそうだ。

こればっかりは校則だから仕方がないと思っていたが、謹慎があけてもYは学校に来なくなった。

そして、退学した。

あまり仲がいいとはまでは言えない間柄だったので、ドライなもので1ヶ月もすれば忘れていた。

2年生の夏休みまであと僅かな日。

Aが「Yが死んだらしいよ。」

突然過ぎてよくわからなかった。

A 曰く、Yは退学したあとに事件を起こして少年院に入り、出所したあとに刺されて死んだらしい。

葬式は家族葬だったので、同級生はだれも行ってないらしい。

と聞いてもやっぱりドライなものであまり感情も湧かなかった。

夏休みに突入。

夏休みと言えど、午前中は夏季補習があって昼から部活で終わるのが夕方。

夏季補習最終日、つまり明日から本当に夏休み。

部活終わりにカラオケに行って最後に公園で花火。

近所迷惑も憚らず、ワイワイ良いながら手持ち花火や打ち上げ花火をしていた。

花火の炸裂する音も大きかったが、バイクが走ってくる音が聞こえる。

ふと公園の外に目をやるとライダーがまたがったままバイクが停まっていた。

こちらを見ている様子。

次の瞬間、

ライダーがすっと腕を伸ばし、親指を立てる。

数秒間、時が止まった感じがした。

奇妙な既視感。

するとまたバイクは走り出した。

フルフェイスのヘルメットには「16」と雷マークのステッカー。

バイクの色はライムグリーンだった。

まさか!

と思い、公園の外に走って出てみたがバイクの姿はもう見えず、マフラーのうるさい音だけが遠くに聞こえていた。

それ以来、夜中にバイクが走っている音を聞くと気持ちがザワザワした、高校2年の夏。


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