私が高校を卒業して、親元の大分を離れて福岡の予備校で大学浪人しているその年の夏に大阪に住む母方の祖母が亡くなった。
約20前の携帯電話が普及する前の時代だったが本来、寮の中では21時を過ぎたら電話の取り次ぎをしてもらえないルールだったのだが、こうした場合は特例で取り次がれ親から訃報を聞き、翌日に新幹線に乗り大阪へ向かった。
新大阪駅で前日に大阪入りしていた父と合流して、そのまま斎場へと向かった。
斎場に着くと久しぶりに会う親戚への挨拶を済ませて親族控え室で高校卒業後に喪服用に購入していたスーツに着換えた。
まさかこんなに早く着ることになるとは思わなかったが、この喪服用のスーツについての奇談はまた別の機会に。
※http://realkaidan.wp.xdomain.jp/joke/120
お葬式では会場前列の親族席2列目に座った。
お坊さんのお唱えが始まると、大阪へは小学生の頃から毎年夏休みに帰省していたがこんな形で大阪に来るとは…と想いにふけっていた。
その時だった。
「〇〇ちゃん」と後ろから優しい声で私の名をを呼ぶ声がした。
え?と思った。
お葬式の最中に後ろから呼ばれる事自体おかしなことだし、振り返るわけにもいかない。
そのことよりも驚いたのはその声は亡くなった祖母の声だったこと。
隣に座る姉の様子を見ても目元や口元をハンカチで拭いて泣いているだけだった。
やはり私の名を呼ぶ祖母の声が聞こえたのは私だけのようだった。
お葬式が終わり、母と姉に「こんな時に悪い冗談を!」と怒られるかもしれないけれど恐る恐る後ろから名を呼ばれた話をしたが母から「〇〇は一番下の孫だったから1番甘やかされ可愛がられてたからねぇ。」と涙ながらに言われた。
親類に最後に声をかけられるのであれば、霊感も悪くない。