家賃(事故物件)

家賃 事故物件/私が体験した実話の怪談

アパートなどの良し悪しは家賃によって示されている。

鹿児島で住んでいたアパートは1Kで¥38,000だったが大学寮から引っ越した友人が住んだアパートは2Kで¥24,000だった。

私と友人のアパートは大学を挟んで真逆の方角に位置していたがこの家賃の差はなんだろう?と思っていた。

鹿児島は桜島が噴火すると灰が降るという他にはない地域色があるが、もう一つ台風にも影響されるという地域色もある。

大学2年の夏に台風が直撃して大学の講義も休講となり、家でおとなしくしているしかなかった。

停電にならないことを祈りながらゲームに興じていたが、友人から電話がかかってきた。

「頼むから車で助けに来てくれ!」

尋常でない様子に慌てて友人のアパートへ向かった。

友人のアパートに着くと理由が分かった。

友人のアパート近くの川が荒々しく今にも溢れそうだった。

しかも道路は既に排水溝から上がってきた水が足首近くまで溜まっていたのだった。

友人は1階に住んでいた。

このままだと床下浸水もしくは床上浸水も時間の問題だろうという状況だった。

慌てて必要な衣類と貴重品そしてバイト代で買ったばかりのパソコンとテレビを車に載せたが、気がつくと道路の水位は足首を越えて、冠水と言ってもおかしくない状態になっていた。

冠水状態では車と言えど、マフラーから水が流入すれば動かなくなってしまうので慌てて発進した。

少し走ると冠水状態の道路から抜け出した。

つまり友人が住んでいたアパートの家賃の安さは土地の高低差なのだろう。

家賃には意味があるということをこの時に知った。

この数ヶ月あとに友人は私より家賃が高い別のアパートに引っ越したが、今回は1階ではなく2階の部屋を借りていた。

思ったより前置きが長くなったが、今回の怪談の本題はここからです。

最近では「事故物件」という言葉がみんなが知っている不動産用語になっているが事故物件という言葉が浸透したのはいつ頃だろうか?

私が大学生の頃は事故物件ではなく「曰く付きの物件」「出る物件」と呼ばれていたような気がする。




というのも毎年春先だけ不動産屋で入学が決まった学生さんとその親御さんの部屋案内のバイトをしていたことがある。

大学近くの小さな不動産屋だったため社員だけでは春の客をさばくことができずに学生を雇っていたわけだが、探す学生親子も急いでいることが多いのでよっぽど下手でなければ3部屋案内すればだいたい契約をもらえ、約一ヶ月で15万前後稼げるバイトだった。

毎年続けたバイトの1年目。

その日も朝からアパート探しの親子連れが来店していて、1組目の案内が終わり、2組目の親子連れの対応を始めた。

あまり予算がないのでという要望を聞き、安めのアパート物件の情報を3件ピックアップして案内へ。

家賃が安いのは大学から少し離れているということが理由になるが、自転車があれば問題にならないぐらいの距離だ。

1件目と2件目の案内が終わって、2件目が「大学からは少し遠いがコンビニやスーパーなどもあって良いね」という話になった。

3件目をどうするかという話になったが「せっかくだから見てみよう」とお父さんが言うので見に行くことに。

1件目と2件目は1Kのアパート物件だったが3件目のアパートは2階の1LDKだった。

先程の物件よりもさらに大学から離れていたが1LDKなのに前に見たアパート物件と家賃が変わらない?ということに違和感を感じた。

そして違和感を感じたのは家賃だけでなく室内の空気だった。

天気もよく日差しもさしているので室内は明るく、室内のメンテナンスも住んでいるので印象はきれいな物件だった。

それなのに何か空気が重たく感じたのだった。

もしかして曰く付きのアパートか?と思っているとお母さんが「なんか気持ち悪いわねぇ」と一言。

お父さんは何も感じていないようだったが、住むことになる本人である息子さんもあまり乗り気ではない様子。

空気の重たさを感じているのは自分だけではなかった。

結局、2軒目のアパートで契約することになった。

契約手続き自体は社員さんが対応してくれるので契約が済んだあと、親子連れに送り出しの挨拶をして少し遅くなった昼休憩に入る。

社員さんに3件目アパートのことを質問してみたが特に曰く付きの物件ではないとのことだった。

ただ自分としては家賃がいくら安かろうがあの物件は何か嫌だなーと思ったので自分の中で曰く付きの物件として、その後の案内でピックアップすることはなかった。

3月末、もう客数も少なくなりバイト期間も終わりに近づいていた。

壁に貼られた学生向け賃貸アパート物件の一覧を見るとあの物件も契約済になっていた。

自分より先にバイト期間が終了した学生も多かったので誰が契約を取ったのかも分からなかった。

バイト最終日。
バイト代をもらった際に社員さんから「来年もよろしくな!」と声をかけられ、バイトに幕を降ろした。

1年後。
また不動産屋のバイトに入った。

1年目の経験も活かして、先に物件一覧に目を通した。

あった。
あの「自称 曰く付きの物件」がまた一覧に載っていた。

その年もいつの間にか契約が決まっていた。

そのまた一年後もバイトに入ったが、またあの物件が一覧に載っていた。

1年以内の物件からの退去は違約金が発生するはずだがそれでも毎年退去しているとなるとやっぱりあの1LDKの家賃が安い物件は曰く付きの物件、今で言う事故物件なのだろうと自分の中では決定付けられている。

ちなみに物件の案内に行く際は必ず押し入れも開けて収納量を確認するが、あの物件では押し入れを開けず終いだった。


【私のおすすめ】

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心霊・怪談へ
<スポンサードリンク>

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 心霊・怪談へ

<スポンサードリンク>




シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする