古本屋のアルバイト

古本屋のアルバイトでの怪談/私が体験した実話の怪談・奇談
鹿児島での大学生時代のアルバイト先での怪談です。

先輩に頼まれて古本屋のアルバイトに入ることになりました。

アルバイトと言っても月に多くても5回ぐらい、深夜の2時間ぐらいの店番で割とバイト代も高かったので引き受けました。

店長は古本屋以外にも喫茶店や居酒屋など複数経営しているそうで、居酒屋が閉店してから古本屋のレジ締めに来ます。

店長が来た時点でアルバイトは終了、そんな感じでした。

深夜ということもあり、ほとんど客も来ないのでかなり楽なバイトでした。

しかも店長からは
「お客さんにこちらから声をかけなくて良い」
「立ち読みは注意しなくても良い」
「もし万引きを見かけても無理に捕まえようとしなくて良い」
など本当にレジに座ってるだけのアルバイトでした。

古本屋でのアルバイトをはじめてみて本当に客が少なく、この深夜の時間帯に開けてる意味があるのかな?という疑問はあったが雇われの身なので勤めるだけでした。

ある日のことです。

いつものようにバイトに入り、店長が出ていったあと店内に客がいないのを確認してから、昼間に買い取った古本のチェックと値付けを済ませてからレジ台の横においてある14インチのテレビに誰が持ってきたかわからないが繋がれているゲーム機でゲームを始めました。

少し経ってからふと気付くと店内に男性客の姿がありました。

自動ドアが開くのに気付かないほどゲームに熱中してたつもりはなかったのですが、1番奥のハードカバーの書籍コーナーに客の気配を感じた。

ただレジから直接見ることはできない。

店内には4台監視カメラがついていてレジから目視しにくい通路を撮影していてるのがレジ台下に設置しているテレビで確認できた。

この時、気配を感じてから客の姿はモニターで確認した。

監視カメラは白黒で4分割。

その中の1つの画面にコートを着た男性が本棚に手を伸ばそうとしている所だった。

客がいるのでゲームをやめて、テレビに戻して深夜枠のバラエティ番組のチャンネルを選んだ。

テレビを見ながら少し時間が経ってふと監視カメラのモニターに目をやると先程の客はまだ同じ通路にいた。

掛け時計に目をやるとあと30分もすれば店長が戻ってくる時間帯です。

レジ前にある全巻セット漫画コーナーを整理していると時間が経ち、自動ドアが開いたので目を向けると店長が入ってきました。

居酒屋の残りものを受け取りながら「お客さん、一人です。」と伝えると店長は監視カメラのモニターを除き込みながら「どこ?」と質問してくるので「ハードカバーの書籍あたりです。」と伝えると店長は「本当?」と返して来るので確認しに行くともう客の姿はなく、ついでに店内一周してみましたが姿はありませんでした。

店長に報告すると客のことは特に触れられず「じゃ、上がっていいよ。」と言われました。

自動ドアなので出ていった様子はなかったのになぁ…と思いつつその日はバイトをあがりました。

別の日のこと。

深夜なのに珍しく客が複数店内にいた。

レジ前の全巻セットの中から漫画をカップルが選んでいたのをレジカウンターからみていました。

ふとカウンターテーブル下の監視カメラのモニターに目をやると先日のハードカバーのコーナーに手を伸ばして本を取ろうとするコートの男性客の姿が映っていた。

この前の…と思った瞬間カップルが漫画を持ってレジにやってきた。

カップルの支払いを済ませて監視カメラのモニターをみるとコートの男性客の姿はなかった。

そしてまた別の日。

その日は店内には客がおらず、私は提出日が間近となった大学のレポートを書いていた。

いつもより早く店長がやってきて「今日はもう上がっていいよ」とのことで、とりあえず自分の荷物を片付けようと思った。

足元においてあったバッグを取ろうとしゃがみ込んだ時にカウンターテーブル下の監視カメラのモニターに目がいった。

いる。

あのコートの男性客が。

私は凝視してしまった。

不自然さを感じたのは本を取ろうと手を伸ばしている…はずが全く動かないからだった。

なぜ本を取らないのか、動かないのか理解した。

男は本を取ろうとしているのではなくて、本棚を指差していたのだ。

モニターから目を離さずに震える声で少し離れた横にいる店長に声をかけた。

店長は驚くべき発言をした。

「またか…」

そして慌てる私をなだめつつ

「時々出るんだ」と。

店長の方に向いてしまったためモニターから目を離してしまったが再びモニターに目を向けるとコートの男の姿はなかった。

店長に「この前の時は…!!!」と最初の時のことを言おうとすると「ごめん、ごめん。特に害はないから。」と苦笑いをしながら言うので絶句した。

害はない?

店長に連れられハードカバーのコーナーに行き、あの指差された本棚を確認するとそこだけ本がない。

店長は「彼は僕の大学時代の同級生で本が大好きなヤツだったんだ。昔、二人でよくこの本屋に夜中に来ててね。今もたまにここにやってくるんだ。ハードカバーの本が好きだったヤツでね、ハードカバーの棚に空きが出ると現れて指摘するんだ。」と笑いながら私に伝えた。

店長は大学を卒業して起業したが10年以上経ってから友人とのこの思い出の古本屋が閉店すると聞いて買い取ったらしい。

これは勝手な推測だが、人が来ない深夜にも店を開けている理由も亡くなった友人のためなのだろう。

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このアルバイトに通う道での怪談はこちら。
【通ってはいけない道】


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