福岡の予備校に通っていた時の怪談です。
私は国立大学を目指していたので多くの教科の講義を受けていました。
数学や英語などは真面目に受けておかなければいけない講義でしたが、センター試験向け現代文に関してはお気楽な感じでした。
この現代文の講師自体、「現代文なんて何が出るかわからんし、一般的な本読んどきゃなんとかなる。」と言っていてテキストの解説を講義の半分でさっさと終わらせて、残り半分の講義時間はくだらない馬鹿話を聞かせてくれるような講師でした。
今考えるといい加減だと思いますが当時はセンター試験向け現代文の講義は息抜きというよりも楽しみにしていた講義でした。
ただ真面目な浪人生はその時間を自習の時間にするか、他の講義に変更などする人もいて、また逆に関係ない浪人生も噂を聞いて講義に忍び混んだりもしていました。
テキストの解説が終わると講師は必ずのように私達浪人生に向かって「お前達は世の中の悪だ!クズだ!親不孝だ!」と罵っていましたが、その意味を納得させるような世の中や社会の仕組みを面白可笑しく話してくれて「だからこそ浪人なんて無駄な時間は絶対この1年で終わらせるんだぞ!」というような浪人生の心をグリップする言葉を残していたのも印象的でした。
そんなセンター試験向け現代文講師の話の中に怪談の話もありました。
福岡や大学にまつわる怖い話を数話して最後にこの予備校の怪談でした。
公にはなっていないが全国展開している予備校なので毎年自殺者が出ていて、この福岡でも数年前に多年浪人生の女の子が…そして人数が多い講義にはその浪人生の霊が紛れ混んでいるかも…。
最後は怪談話ではよくあるように講師の「わっ!」という大きな声でみんなビビって笑って終わりました。
この怪談話に引っかかる所があった。
私が受けているセンター試験向け実践英語の講義、この講義は1番広い講義室で開講されていて、予備校の講義はほとんどフリー席だが席も割と埋まっていた。。
講義の内容は毎回テスト形式で最後の15分ぐらいで解答と解説をするというまったく無駄口もない講義だった。
この講義で1番後ろの隅の席にいつも座っている遠目にもきれいな感じの女の子がいた。
浪人中にうつつを抜かしてる暇などないのだが、ちょっと気になっていた存在。
もっと単純にいうと好みだ(笑)
ただ現代文の講義で怪談話を聞いてからまさか…と思うようになった。
毎講義必ず1番後ろの隅の席に座っていて、隣には誰も座っていない。
怪談話を聞く前の浮ついた気持ちだった頃は講義が始まる前は、「今日はまだ来てないなー」と思っていても講義が始まったあとにはいつの間にか座っていたりした。
この講義は本当に真面目に受けないといけない講義でもあり、寮の友達も一緒に受けていて、私達は黒板も見やすいほぼど真ん中に毎回陣取っていた。
声をかけようかと思ったこともあったが、次の講義が違う階の教室であるのでそんな暇はなかった。
ある時、隣に座っている寮の友達に「ちょっと気になっている1番後ろの隅の子、どう思う?」と聞くと友達は見回しながら「え?どの子?」と言った。
そっか、私にしか見えてないのか…という結論に至った。
気落ちする私に、ニヤニヤする友達。
浮ついた気持ちは一転、恐怖に変わった。
休日、寮の部屋にいると寮監から「お客さん来てるよ。」と内線電話がかかってきた。
1階に降りてみると誰もいなかった。
大分から福岡に来ているので連絡もなくわざわざ人が誰かが訪ねてくることは考えにくい。
寮監に尋ねると「あれ、そこで待っていたんだけどねー。きれいな女の子が。」と。
存在に気付いたからついてきたのか?とあの教室の女の子が思い浮かんだがわかるはずもなく。
というか、寮監は会話したんだな…。
あの教室はこの英語の講義でしか私は利用しないので他の講義の時はどうかはわからず仕舞いだが、割と1番後ろの隅の席はやる気のない浪人生が好む傾向があるが雰囲気的、直感的にこの席はやだなとみんな避けている禁忌の特等席なのかもしれない。
夏休み明けの後期からは講義などのカリキュラムが変わったのでこの教室に入ることもなかった。